ソーシャルファイナンスとは

 2003年にアイルランド政府がまとめた報告書「Social Finance in Ireland? what it is and it's going, with recommendations for its future development」によると、ソーシャルファイナンスとは「金銭上の利益と同様に、社会的利益や社会的配当を追い求める組織により提供されるファイナンス」と定義されています。ただし、「社会的(ソーシャル)」が示す対象や範囲等、明確な定義があるわけではありません。

 ソーシャルファイナンスと称される事例としては、以下のような取り組みが挙げられます。

◆社会的事業に限定した投融資している欧州の「ソーシャルバンク」(例:トリオドス銀行)
◆主に開発途上国の貧困層(女性)を対象し、生活の向上や貧困削減を目的とした「マイクロファファイナンス」(例:グラミン銀行)
◆風力・太陽光発電等、再生可能エネルギーに投資する「自然エネルギーファンド」(例:おひさまファンド)
◆市民からの出資をもとにNPO・コミュニティビジネス等に融資を行う「NPOバンク」(例:未来バンク事業組合)

 いずれの事例も、既存の金融機関では投融資の対象となることが難しい分野であり、金銭的リターンよりも社会的リターンを重視した金融の仕組みであるといえます。


 また、先述のアイルランドレポートでは、ソーシャルファイナンスの特徴として以下が紹介されています。

(1)ソーシャルファイナンスの目的は、金融という手段を持続可能で公正な開発のために使うことである
(2)ソーシャルキャピタルを発達させる長期的なビジョンを持つ
(3)資金提供の様々な機会や手段を持っており、それぞれが異なった方法や行動様式を有しているが、ソーシャルファイナンス特有のアイデンティティは首尾一貫している
(4)資金調達を行う財務面での専門家と、地域コミュニティで活動を行う活動家の2種類の構成員を有している
(5)ソーシャルファイナンスは貧困や社会的排除といった、金融サービスへのアクセスが難しい環境において活動する
(6)一般的な金融サービスから締め出されている組織や個人に対して優先的に資金を供給する組織である

 いずれの特徴も、既存の金融システムではほとんど認識されてこなかったものばかりといえます。


 当団体の「ソーシャルファイナンス研究会」では、ソーシャルファイナンスに関する事例を取り上げ、その定義や特徴を議論してきました。後述の通り、ソーシャルファイナンスの誕生は、欧米・日本・開発途上国の文化・社会・経済的背景によって異なり、手法やそれを支える制度も独自の発展を遂げています。しかし、共通項として、社会課題を解決したいという担い手たちによる"想い"や"熱意"といった経済的指標では捉えられない価値観やストーリーを原点として、周囲の人びとに共感の輪を広げてきたというプロセスが多く見られました。

 また、ソーシャルファイナンスには一定地域を対象とした事例が多くありますが、最近では米国の「Kiva」のように、IT技術を通して世界中の人びとが開発途上国の起業家を支援する事例も生まれています。さらには、投融資に留まらず、既存の金融機関が重視してこなかった米国の移民に対する海外送金サービスを確立した「MFIC」の事例など、社会的事業の進展に金融手法が組み合わさることで、多様なソーシャルファイナンスの未来像が描かれつつあります。