土谷和之さん(国際青年環境NGO A SEED JAPAN 理事)
■エコ貯金プロジェクトとは
A SEED JAPANの『エコ貯金』(※)プロジェクトでは、環境や社会により配慮した金融機関にお金を預け替えることで、世界をよりよく変えていくことを提案しています。日本の金融機関にある預貯金は総額約800兆円。その預貯金を環境問題や貧困問題の解決に使うことで、経済全体を環境・社会配慮型のものに変革していくことができるのです。
最近、金融機関もCSR(企業の社会的責任)に関する取り組みを強化しています。例えば、みずほフィナンシャル・グループは風力発電事業への融資に積極的です。各地の信用金庫・労働金庫の中にはNPO向けの融資を展開しているところもあります。しかし、その規模はまだ小さく、預貯金全体に占める割合はごくわずかです。こうした取り組み(=ソーシャルファイナンス)が金融の本流(メインストリーム)となるよう、預金者=市民が金融機関により積極的に働きかけていく必要があります。
■預金者の動きが金融機関を変える
1世帯当たりの金融資産は平均1,100万円、そのうち約600万円が預貯金です。その預貯金をmomoのようなNPOバンクや自然エネルギー事業に出資したり、SRI(社会的責任投資)ファンドに投資したりと、いまあるお金の預け替えていくことが、ソーシャルファイナンスの普及拡大につながります。私たちが呼びかけた「エコ貯金アクション」では、2010年1月までに約1,500人が10億円に迫るエコ貯金宣言を行っています。預貯金を「身近な地域に融資してほしい」、また「社会的に悪影響を及ぼす事業へは融資してほしくない」との想いから、地域性や社会性のある労働金庫や信用金庫を選ぶ預金者が多くなっています。
■メガバンクへの公開質問状
また、A SEED JAPANではエコ貯金アクションで集められた預金者の声を踏まえ、メガバンクへの提言活動を実施しています。2004年からこれまで3回にわたりメガバンクに対して「金融機関の社会的責任に関する公開質問状」を送付し、その取り組みの実態を開示するよう求めています。メガバンクが自ら社会的な問題にコミットし、その解決に向けて取り組むことが、ソーシャルファイナンスをメインストリーム化していくと考えているからです。
■今後の展開
これからはソーシャルファイナンスの仕組みによって、国内のみならず途上国での貧困問題・社会問題を解決しようとする金融機関が日本でも登場してくるでしょう。現実に、「Living in peace」「ARUN合同会社」といった途上国への社会的投資を志向する団体が登場しています。途上国の支援の多くはこれまで政府開発援助(ODA)に依存してきましたが、これからはソーシャルファイナンスがその一翼を担うはずです。ソーシャルファイナンスは、弱い立場の人びとにも対等に与えられるべき権利を担保できる、公正な金融の仕組みだからです。
【キーワード解説】エコ貯金
エコ貯金は金融機関に預ける「預金」だけでなく、以下の3つのタイプに分けられる。
(1)銀行を選ぶ ~預貯金型エコ貯金~
郵便局、銀行、信用金庫、労働金庫など、普段の暮らしの中で使う金融機関を、社会性の視点をもって選ぶ。
(2)NPOに預ける ~出資型エコ貯金~
NPOバンクへの出資を通して、福祉、教育、環境保全などで活躍するNPOや社会起業家を支援する。
(3)直接支援する ~投資型エコ貯金~
社会的責任投資(SRI)。株や投資信託などにおいても、利益だけでなく社会性を考えて投資する。
http://www.aseed.org/ecocho/index.html
【プロフィール】土谷和之さん
1977年生まれ。某民間シンクタンクに勤務する傍ら、2004年からA SEED JAPANのボランティアとして活動を始め、2006年より同団体理事。「戦争や環境破壊に使われない、フェアなお金の流れをつくるために金融機関を選ぶ」という新しい貯金スタイル=「エコ貯金」を推進するプロジェクトを担当し、キャンペーン活動や金融機関への提言、執筆活動などを行っている。
【コラム】クラスター爆弾製造企業への投融資に新たな進展
先に触れたメガバンクへの公開質問状によって、2009年9月に大きな進展があった。同年7月にA SEED JAPAN(以下ASJ)がメガバンク3行に送付した質問状の回答において、みずほフィナンシャルグループ(以下FGと略記)、三菱UFJFGの2行がクラスター爆弾製造企業への投融資の問題への対応を「検討している」と回答したのだ。
具体的な取り組みについては、みずほFGは非公表であるが、三菱UFJFGは「内部における個別融資案件の資金使途チェックの1項目として検討し、一部で実施している」と回答した。これまで、日本ではこうした特定の業種を投融資先から排除する「ネガティブ・スクリーニング」は導入されにくいと言われていたが、クラスター爆弾製造企業について具体的な進展が見られたことは大きな前進である。ただし、両行とも投融資中止を明確に謳っているわけではない。今後はより明確な投融資基準の策定と情報公開が求められよう。
また、世界的には2009年10月29日、クラスター爆弾の廃絶を求めて様々な活動を展開しているNGOの連合体CMC(クラスター爆弾連合)が、クラスター爆弾製造企業への投融資中止キャンペーンを世界17カ国で立ち上げ、同時にクラスター爆弾の製造企業に対する金融機関(政府系ファンド、年金基金含む)の投資状況についてまとめた世界初の報告書「Worldwide investments in CLUSTER MUNITIONS: a shared responsibility」を公表した。
この動きを受けて、CMCの日本の窓口団体である地雷廃絶日本キャンペーン(JCBL)とASJは協働で、非人道的兵器の製造企業や人権侵害・環境破壊に大きく加担している企業に対する投融資の基準づくりを金融機関、年金基金等に求める「どこに行ってる? 私のお金」(Where is my money going?)キャンペーンを2010年1月に立ち上げた。小規模に発進したキャンペーンだが、同月に開催されたキックオフシンポジウムは約40名の熱心な聴衆を集め、この問題に対する社会的な関心の高まりを感じさせた。
こうした市民発の動きを日本の金融機関がきちんと受け止め、ソーシャルファイナンスの実践に向けたより積極的なアクションを起こすことを期待したい。

